インド法律情報Q&A

【インド進出方法に関するQ&A】

 
Q1. インドで事業を行う場合、どのような形態がありますか?
A1: インドに進出する際の形態としては、原則として、以下の4つのいずれかとなります。
(1) 現地法人(株式会社)
(2) 駐在員事務所(Liaison Office)
(3) 支店(Branch Office)
(4) プロジェクトオフィス(Project office)
(5) 有限事業組合
 
Q2. 駐在員事務所(Liaison Office)の特徴は何ですか?
A2: 駐在員事務所では、インドのビジネス環境や投資環境を理解するための情報収集・調査等の本社の出先機関としての活動を行うことができます。一方で、駐在員事務所での営業・商業活動は認められません。
期間は、3年間(3年ごとに延長の申請が可能)であり、この間、収益を得る活動はできませんが、進出のための準備を行うことができます。
 
Q3. 支店(Branch Office)の特徴は何ですか?
A3: 支店は、営業・商業活動が可能であり販売などの営利活動の拠点とすることができます。この点で、駐在員事務所よりも広範な活動が可能といえます。もっとも、製造や加工等の活動は行うことができません。
親会社が存続する限り支店も存続するため、駐在事務所のような期間の制限はありません。
 
Q4. プロジェクトオフィス(Project office)の特徴は何ですか?
A4: プロジェクトオフィスとは、インフラ事業などの特定のプロジェクトを行うためのオフィスとなります。実施するプロジェクトにおいては収益を得ることが可能ですが、実施するプロジェクト以外で収益を得る活動はできません。
存続期間は、実施するプロジェクトの期間になります。
 
 Q5. インドの公開会社と非公開会社の違いは何ですか?
A5: インドの会社の種類は、公開会社(Public Company)と非公開会社(Private Company)に分類されます。公開会社と非公開会社では、会社法上要求される株主及び取締役の員数が異なります。

  株主の員数 取締役の員数 居住取締役の員数
公開会社 7人以上必要 3人以上必要 取締役のうち居住取締役1人
非公開会社 2人以上必要
最大200人
2人以上必要 取締役のうち居住取締役1人
 
 
 
※居住取締役とは、当会計年度中182日以上インドに滞在した取締役のことをいいます。
上場会社、一定規模以上の公開会社は独立取締役及び女性取締役の選任、指名・報酬委員会及び監査委員会の設置が要求される場合があります。
 
Q6. 会社設立にはどのような手続が必要ですか?
A6:会社設立には以下の手続が必要となります。
(1) 取締役識別番号(DIN)及びデジタル署名(DSC)の取得
まず、取締役に就任する者の取締役識別番号(Director Identification Number:DIN)及びデジタル署名証明書(Digital Signature Certificate:DSC)を取得する必要があります。
(2) 会社名の申請
企業省のウェブサイト上で申請することができます。一度に申請できる社名は2つまでとなり、既に登録されている他社名や商標と酷似していれば承認されません。
(3)  基本定款及び附属定款の作成及び提出
基本定款には、会社名、住所、目的、資本金が記載されます。附属定款には、株主総会や取締役会に関する規定等の会社運営上の事項が記載されます。基本定款及び附属定款は、登記住所を設置する州ごとの会社登記局に他の必要書類と併せて提出する必要があります。
(4) 銀行口座開設、資本金送金、インド準備銀行への報告
資本金を送金するための銀行口座を開設する必要があります。資本金送金後から30日以内にインド準備銀行に資本金着金及び株式割り当ての報告を行う必要があります。
(5) 納税者番号(PAN)及び源泉徴収番号(TAN)の取得
会社の納税者番号(Permanent Account Number:PAN)及び源泉徴収番号(Tax Deduction Account Number:TAN)を取得する必要があります。
(6) 事業開始届の提出
登記完了後180日以内に事業開始届を会社登記局のウェブサイト上で提出する必要があります。
 
Q7. 株式の種類にはどのようなものがありますか?
A7: 会社法上、資本株式(Equity Share)と優先株式(Preference Share)の2種類が規定されています。
資本株式には、さらに普通株式とクラス株式の2種類があります。普通株式は、日本の普通株式と同様の権利を株主に付与します。クラス株式とは、資本株式の中で配当及び議決権に関する権利が普通株式とは異なる定めで発行された株式となります。
優先株式とは、附属定款で規定された権利についてのみ議決権を行使できますが、優先的に配当を受けることが認められます。
 
Q8. インドで会社を設立する際の最低資本金はいくらですか?
A8: 最低払込資本金の制限はありません。
 
 
 

【インドの会社法に関するQ&A】

Q1:株主は何名必要ですか?
A1: 公開会社であれば最低7名の株主が必要となります。非公開会社の場合は、最低2名以上の株主が必要となります。
 
Q2:減資手続きは難しいですか?
A2:取締役会の承認、株主総会特別決議、会社法審判所(NCLTNational Company Law Tribunal)からの認可の取得が必要となります。
 
Q3:取締役は何名必要ですか?
A3:公開会社であれば最低3名以上必要となります。非公開会社の場合は、最低2名以上の取締役が必要となります。
 
Q4:定款を作成する必要がありますか?
A4:会社設立申請のために基本定款と附属定款を作成し会社登記局に提出する必要があります。基本定款には、会社名、住所、目的、資本金が記載されます。附属定款には、株主総会や取締役会に関する規定等の会社運営上の事項が記載されます。
 
Q5:株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A5:毎年1回定時株主総会を開催する必要があります。時期は、会計年度の終了から6か月以内となります。ただし、会社設立後最初の定時株主総会については、会計年度の終了から9か月以内の開催でもよいとされています。
 
Q6. インドにおいて監査役を選任する必要はありますか?
A6: 監査役設置義務があります。勅許会計士(chartered accountant)又は会計士がパートナーの過半数を務める会計事務所を選任する必要があります。インドの監査役は、日本の業務監査を行う監査役というよりも会計監査人に近い業務を行います。
 
Q7:取締役の報酬は自由に決めて良いのですか?
A7:附属定款又は株主総会の普通決議により決定されます。附属定款で株主総会特別決議で決定すると規定する場合は、株主総会特別決議により決定されます。そして、公開会社では、原則、取締役の報酬総額が当該会計年度における純利益の11%を超えることはできません。非公開会社の場合は、純利益を基準とした制限はありません。

【インドの労働法に関するQ&A】

 
Q1. インドの最低賃金額はいくらですか?
A1: インドの最低賃金額は全国一律ではなく、州ごとに異なります。そして、最低賃金額は、労働者のスキルや職種により区別されます。未熟練、半熟練、熟練、事務職、高度熟練に分けられます。202210月に発表されたデリー連邦直轄地の最低賃金額は、以下の通りとなっています。
 

・スキル 最低賃金額 ※VDA(物価調整手当)を含む
未熟練 16,792ルピー
半熟練 18,449ルピー
熟練 20,357ルピー
・事務職・管理職
大学未入学 18,499ルピー
大学入学、中退 20,357ルピー
大学卒業 22,146ルピー

 
Q2. インドで雇用契約書の締結は必須ですか?
A2: 労働安全衛生法では、事業場に従業員を採用する場合は、任命書(Letter of appointment)を発行しなければならないとしています。
 
Q3. 任命書に記載する必要がある事項は何ですか?
A3: 記載内容や形式は該当する行政機関によって定められます。一般的には、業務内容、役割、勤務地、勤務時間、給与、福利厚生等が記載されます。
 
Q4.インドにおいて試用期間の規制はありますか?
A4: インドの労働法制は、就業規則において研修生(Probationer)に関する規定を定めることを認めており試用期間を置くことを許可されていると解されています。また判例法理でも試用期間を設けることが認められています。一般的に、3カ月から6カ月の試用期間が設けることが認められています。
 
Q5.インドの労働時間の規制は日本と同じですか?
A5: 原則として、労働者の労働時間は18時間を超えてはならず、週6日を超えて働かせてはなりません。労働者の同意を得れば時間外労働が認められます。
 
Q6. インドの休憩時間の規制はありますか?
A6: 休憩時間については、労働法制上の明確な規定がなく、今後各州政府により定められる可能性があります。
 
Q7. インドの時間外労働手当の割増率はいくらですか?
A7: 時間外労働には2倍の賃金を支払う必要があります。また、時間外労働の上限については、労働法制上の明確な規定がなく、今後各州政府により定められる可能性があります。
 
Q8. インドの有給休暇は何日ですか?
A8: 年間180日以上労働した労働者は、20日毎に1日の有給休暇が付与されます。付与された有給休暇を取得しなかった場合は、年間30日を超えない限度で翌年に繰り越すことができます。
 
Q9. インドでは、どのような場合に解雇が認められていますか?
A9:以下の場合には、解雇を行うことができます。
・普通解雇
・整理解雇
・事業の閉鎖
・懲戒解雇
 
Q10. インドには社会保障制度がありますか?
A10: 社会保障法により労働者が受給できる社会保障が定められています。一定規模以上の事業所の使用者は、従業員積立基金制度に加入しなければなりません。また、医療保険制度である従業員国家保険制度が存在します。

【インドのビザに関するQ&A】

 
Q1. インドで働く場合、どのようなビザを取得する必要がありますか?
A1: 就労を目的としてインドに来る場合は、就労ビザを取得する必要があります。
 
Q2. 就労ビザの取得要件はありますか?
A2: 原則として、就労ビザを取得する外国人は、産業分野に関わらず年間USD25,000以上の給与を受け取っている必要があります。また、申請者は高度な技術や資格を持つ専門家である外国人である必要があります。さらに、申請者の出身国又は居住国から発行されたものでなければならず、その国での申請者の居住期間が2年以上であることが条件となります。
 
Q3. 就労ビザの有効期限はありますか?
A3: 所定の技能を有する日本人への就労ビザの有効期間は3年間となります。ただし、インド政府と日本政府の二国間協定に基づき入国する日本人労働者は、協定に記載された期間又は5年間のいずれか短い方となります。
 
Q4. 就労ビザの申請手続はどのように行うのですか?
A4: 申請者は、オンラインシステム(Indianvisaonline.gov.in)を通じて申請書を作成し提出します。また、申請者は印刷した申請書と必要書類をインド大使館に提出する必要があります。申請が承認された後、申請者は大使館でビザを受領するか、大使館が申請者に郵送で送付します。就労ビザを得てインドに入国した後、14日以内に外国人地域登録局(FRRO)、外国人登録事務所(FRO)に登録する必要があります。
 
Q5. 就労ビザの申請のための必要書類は何ですか?
A5: 一般的には以下の書類が必要になります。
(1) 申請書
(2) パスポート(有効期間が1年以上あり、空白ページが3ページ以上あるもの)
(3) 雇用契約書(インドの法人との雇用関係を証明する書類)
(4) 学歴証明書
(5) 会社登記書類
(6) 履歴書
 
Q6. 就労ビザを取得する場合、家族の同伴も可能ですか?
A6: 就労ビザを取得した外国人の家族は、就労ビザと同期間有効の帯同ビザの発給を受けることができます。

【インドの不動産法制に関するQ&A】

 
Q1. 外国会社がインド国内の土地を取得できますか?
A1: RBI(インド準備銀行)から許可を取得することにより外資であってもインド国内の土地を取得することができます。
 
Q2. インドの土地の登記はどのような効力を有していますか?
A2. 売買契約書や賃貸契約書が登記の対象となります。登記簿上では、不動産の権利関係が記録されているわけではないため、登録された契約書を遡ることにより現在の権利関係を把握することになります。そのため、日本のように登記に公信力が認められているとはいえません。また、登記を怠るとこれらの売買契約書や賃貸契約書は訴訟において証拠として認められません。
 
Q3. インドの不動産の登記は第三者も閲覧できますか?
A3: インドでは、売買契約書や賃貸借契約書が登記の対象となり、これらの登録された契約書は州の登録所において公衆の閲覧に供されています。登記簿を見て現在の不動産の権利関係を即座に把握することはできませんが、これらの登録された契約書を確認することはできます。
 
Q4. インドにおいて土地と建物は別個の権利対象となりますか?
A4. インドの不動産法制上、土地と建物は別個の権利対象として扱われています。そのため、土地と建物は別個の主体による所有が可能となります。
 
 
 

【インドの外資規制に関するQ&A】

 
Q1. インドでは外資はどのような業種を行うことが可能ですか?
A1. 商工省が外国直接投資に関する政策文書を発表しており、当該政策文書にネガティブリストとして外国直接投資の禁止・規制対象となる業種が記載されています。外国投資が禁止されている業種は以下の通りです。

  • ①宝くじ(政府・民間宝くじ、オンライン宝くじなど含む)
  • ②ギャンブル・賭博場
  • ③チットファンド事業
  • ④ニディ会社
  • ⑤譲渡可能な開発権の取引
  • ⑥不動産業又は農家の建設
  • ⑦煙草、葉巻、チェルート、シガロ、シガレット及びその他の煙草代替品の製造
  • ⑧原子力産業及び鉄道事業等の民間投資が認められない分野

 
Q2. 出資比率に上限がある業種はありますか?
A2. 以下の業種についは、外国直接投資に関する政策文書に規定される条件の下で一定の制限が設けられており、外国投資が100%まで認められない場合があります。

  • ①石油天然ガス
  • ②ブロードキャスティング
  • ③印刷出版
  • ④民間警備会社
  • ⑤通信サービス業
  • ⑥小売業(複数ブランド)
  • ⑦銀行業
  • ⑧証券
  • ⑨保険業
  • ⑩年金
  • ⑪電力取引
  • ⑫民間航空業
  • ⑬防衛機器産業
  • ⑭医薬品
  •  

Q3. インドでフランチャイズ規制はありますか?
A3: インドには、フランチャイズを特別に規制する法律はありません。そのため、フランチャイズの当事者は、契約法等の一般的な法律に従う必要があります。もっとも、1999年財政法には、フランチャイズは、商標やロゴに関係なくフランチャイジーに商品の販売、製造、サービスの提供、又はフランチャイザーと識別されるプロセスを実行する権利を付与する契約であるとのフランチャイズの定義として参照できる規定があります。
インド国外のフランチャイザーは、当該事業をはじめるにあたり外国直接投資に関する政策文書の規定に従う必要があります。
 
Q3. インドにおいて外国人雇用規制はありますか?
A3: 公務員等の外国人が就くことができない職種があります。また、外国人を雇用する際や解雇する際に従うべき規制もあります。
 
 
 

【インドの弁護士制度に関するQ&A】

 
 Q1:インドの弁護士資格はどうすれば取得できますか?
A121歳以上でインド弁護士会が承認している大学で法学の学位 (3 年又は 5 年) を取得していることで弁護士会に登録することができます。また、All India Bar Examinationという弁護士資格試験に合格することで法定代理人として訴訟業務を行うことが可能となります。
 
Q2:インドに弁護士会はありますか?
A2:インドの弁護士法に基づき、インド法曹評議会と州法曹評議会が設立されています。これらの法曹評議会は、弁護士の規律の策定や弁護士の利益を保護するための活動を行っています。
 
Q3:インドに司法書士や行政書士等の隣接法律職はありますか?
A3:インドには、会社法や労働法等の法的な情報提供、コンプライアンス体制構築のサポート、紛争解決のための助言や書面の作成等の業務が弁護士のみならず会計事務所、会社秘書役、コンサルタント等が行っているとの実態が存在します。もっとも、業務内容によっては、弁護士法に抵触するといわれております。裁判所も原則として弁護士以外の者の法律業務を認めていません。
 
 
 

【インドの清算及び破産に関するQ&A】

Q1. インドでは会社の清算方法はどのようなものがありますか?
A1: 概ね以下の4つの清算方法が定められています。
(1)会社法審判所による清算
(2)企業登録局(ROC)による会社登録簿からの社名削除
(3)破産法による清算
(4)自主清算
 
Q2. 会社法審判所による清算はどのような場合に行われますか?
A2: 下記事由が生じた場合、会社等は会社法審判所に清算を申立てることができます。

  1. 会社が債務不履行に陥った場合
  2. 会社が株主総会特別決議により清算することを決議した場合
  3. 会社が、 インドの主権及び威信、 国の安全、 外国との友好関係、 公序良俗に反する行為を行った場合
  4. 登記官等の申請に基づき、会社法審判所が、会社の業務が不正な方法で行われた、 会社が不正かつ違法な目的で設立された、 又は会社の設立若しくは業務運営に関与した者が、 詐欺、 不正行為若しくは不正行為に関連し、 会社を清算することが適切である判断した場合
  5. 会社が直前5会計年度の財務諸表または年次申告書を登記官に提出しなかった場合
  6. 会社法審判所が、 会社を清算することが公正かつ衡平であると判断した場合

 
Q3. 企業登録局(ROC)による会社登録簿からの社名削除はどのような場合に行われますか?
A3: 登記官が以下の事由に該当すると判断する合理的な理由がある場合に社名削除が行われます。

  1. 会社設立後1年以内に事業を開始しなかった
  2. 直前2会計年度の間に事業を行っておらず、その期間内に休眠会社とする申請を行わなかった場合

 
Q4. 破産法による清算はどのような手続ですか?
A4: 債務者や金融債権者等の申請者は、会社法審判所に対して再建型の破産処理手続を申請する必要があり、当該手続内で会社法審判所が再建計画案を受領しなかった場合又は同所により同計画案が承認されなかった場合に清算手続に移行します。
 
Q5. 再建型の破産処理手続はどのような手続ですか?
A5: INR10万以上の債務不履行がある場合、債務者(会社)や金融債権者等は会社法審判所に対して破産処理手続の開始を申立てることができます。会社法審判所による破産処理手続開始決定が行われた場合、債務者(会社)の財産の保全命令、暫定再建専門家を選任します。暫定再建専門家は、債務者の財産状況を把握・管理し債権者委員会を構成し、債権者委員会が再建専門家を選任します。破産処理手続の申請者は、再建専門家の要求に応じて再建計画案作成し、同計画案が債権者委員会に提出されます。債権者委員会において承認を得られた場合に、会社法審判所に再建計画案が提出され、同所においても承認されれば債務者・債権者は同再建計画案に従い再建型の破産処理手続が進められます。
 
Q6. 自主清算はどのような手続ですか?
A6: 自主清算は、会社が債務不履行に陥っていなくても行うことができる清算手続です。定款で定められた期間が満了した、又は株主総会において自主清算を行う旨の特別決議をした場合に行うことができます。
 
 

【インドの裁判及び仲裁制度に関するQ&A】

Q1. インドの裁判制度はどのようになっていますか?
A1: インドの司法権を担う機関は、最高裁判所、最高裁判所の下に位置づけられる裁判所で構成されています。最高裁判所の下には、各州に高等裁判所があり、その下に下級裁判所があります。他にも準司法機関である会社法審判所、労働審判所、直接税審判所、間接税審判所等があります。
 
Q2.インドの民事訴訟制度はどのようになっていますか?
A2: 民事裁判の手続に関しては、民事訴訟法(Code of Civil Procedure, 1908)に規定されています。原告が裁判所に訴状を提出することにより開始されます。訴状が提出されると裁判所は被告に召喚状を発行し、書面で訴状に対する答弁書を提出することを求めます。原告と被告それぞれが訴答書面を提出すると裁判所は争点を整理し、証拠開示と承認尋問が行われ、最終弁論を経て判決が下されます。
 
Q3.インドにおいて日本の判決は執行されますか?
A3: 日本はインドと判決の執行における相互主義に関する二国間条約を締結していないため日本の判決をインドで執行することはできません。裁判所による解決を図るためには、改めてインドの裁判所に訴訟を提起する必要があります。
 
Q4. インドにおいて労働事件に関する訴訟制度はどのようになっていますか?
A4: 労働争議の当事者は、共同又は個別に所定の方法で当該紛争を労働裁判所(Labour Court)労働審判所(Tribunal)又は全国労働審判所(National Tribunal)に申立てることができます。当事者や事業場等が複数の施設にまたがる場合等は、全国労働審判所が利用されます。労働裁判は、関係当局によって任命される1名の裁判官により構成されます。労働審判も関係当局により任命される1名の審判官により構成されます。
 労働争議の解決手段として調停手続きにおける和解も存在します。調停委員は、委員長1名と関係当局が適当と考える員数2名又は4名で構成されます。もっとも、和解は調停手続きによらなくとも使用者と労働者が書面による合意があり、両者の署名がなされた当該書面の写しが関係当局及び調停官に送付された場合も成立が認められます。

Q5. インドにおける仲裁制度はどのようになっていますか?
A5: インドの仲裁法は、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁に関するモデル法にほぼ準拠しています。インドはまた、外国仲裁判断の承認および執行に関する条約(ニューヨーク条約)を批准しているため、同条約および仲裁法の拒絶事由に該当しない限り、JCAA(日本商事仲裁協会)、SIAC(シンガポール国際仲裁センター)などの外国仲裁機関の行った仲裁判断をインドネシア国内で承認および執行することができます。