インドネシア法律情報Q&A

【インドネシア進出方法に関するQ&A】

 
Q1. インドネシアで事業を行う場合、どのような形態がありますか?
A1: インドネシアに進出する際の形態としては、原則として、以下の4つのいずれかとなります。(支店の形態も存在しますが、外国企業については銀行業等の業種に限られます。)
(1)現地法人(株式会社 PT : Perseroan Terbatas
(2)外国駐在員事務所(KPPAKantor Perwakilan Perusahaan Asing
(3)外国商事駐在員事務所(KP3AKantor Perwakilan Perusahaan Perdagangan Asing
(4)外国建設駐在員事務所(BUJKAKantor Perwakilan Badan Usaha Jasa Konstruksi Asing
現地法人は、外国企業の出資により設立された場合には、外資法人(PMA : Penanaman Model Asing)と呼ばれます。
 
Q2. 外国駐在員事務所の特徴は何ですか?
A2: 外国駐在員事務所の機能は以下に限定されます。
(1)親会社の企業利益の管理
(2)インドネシアで事業を設立し、開発する準備
外国駐在員事務所は、インドネシア国内の州都(ジャカルタ、バンドン、ジョグジャカルタ、 カリマンタンなど)でのみ設立できますが、オフィスビルまたはタワー内で開設する必要があります。代表執行役が外国人の場合は、インドネシアに滞在し、働くための一時滞在許可証(KITAS)と労働許可が必要です。
 
Q3. 外国商事駐在員事務所の特徴は何ですか?
A3: 外国商事駐在員事務所の機能は以下に限定されます。
(1)インドネシアの企業やユーザーに対し、親会社の製品の紹介とプロモーション、宣伝ならびに情報または使用法および輸入方法を提供
(2)親会社の製品をインドネシア国内で販売するための市場調査の実施と調査
(3)海外の親会社が必要とする品物の市場調査およびインドネシアの会社への輸出条件に関する情報提供
(4)親会社が輸出目的で指名したインドネシア国内の会社を代表して契約を締結する
外国商事駐在員事務所は、入札や契約署名、請求の決済など、貿易活動や販売取引を行うことは禁じられます。
インドネシア国内の州都および県・市都に設立できますが、オフィスビルまたはタワー内で開設する必要があります。
代表執行役が外国人の場合は、インドネシアに滞在し、働くための一時滞在許可証(KITAS)と労働許可が必要です。
 
Q4. 外国商事駐在員事務所の特徴は何ですか?
A4: 大臣規定に基づき大規模事業者に分類される外国の建設会社が外国商事駐在員事務所の認可を得ることができます。インドネシア領域内で建設サービス活動を行うことができます。
 
Q5. インドネシアの公開会社と非公開会社の違いは何ですか?
A5: 公開会社(PT Tbk)には、①Perseroan Publikと②Emitenの2種類があります。①Perseroan Publikは株主数300人以上、払込資本金30億ルピア以上の要件を満たす株式会社を指します。②Emitenは、資本市場に関する法令に従い、株式の公募を行う株式会社を指します。非公開会社(PT Tertutup)は、会社法上定義がなく、株式会社のうち公開会社でないものはすべて非公開会社に当たります。
 
Q6. 会社設立時の申請書においてどのような事項を記載する必要がありますか?
A6:申請書には以下の事項を記載する必要があります。
(1) 申請する会社の名称および所在地
(2) 申請する会社の有効期限(なしとすることも可能)
(3) 申請する会社の目的および事業内容
(4) 授権資本金および払込資本金の額
(5) 申請する会社の正式な住所
 
Q7.インドネシアにおいて種類株を発行することは可能ですか?
A7: 会社は株式ごとに異なる権利が付与された異なる種類の株式を発行することができます。
 
Q8. インドネシアで会社を設立する際の最低資本金はいくらですか?
A8: 最低払込資本金100億ルピアが必要です。この最低払込資本金要件は会社設立時に満たす必要があります。
 

【インドネシアの会社法に関するQ&A】

 
Q1:株主は何名必要ですか?
A12名以上の株主が必要です。会社設立後に、株主が1名になった場合には、6か月以内にその状態を是正しなければなりません。
 
Q2:減資手続きは難しいですか?
A2:株主総会の特別決議に加えて、債権者保護手続が必要です。
 
Q3:取締役は何名必要ですか?
A3:非公開会社においては、取締役は1名以上必要であるとされています。
 
Q4:定款を作成する必要がありますか?
A4:定款は、会社設立申請のために法務人権省へ提出する設立証書の記載事項となっているため作成する必要があります。
 
Q5:株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A5:年次株主総会は、会計年度終了後6か月以内に開催しなければならないとされています。その他、臨時株主総会は、会社の利益のために必要とみなされるときにいつでも開催することができます。
 
Q6. インドネシアにおいて監査役を選任する必要はありますか?
A6: 1名以上選任する必要があります。日本における監査役にあたる機関は、インドネシアではコミサリスと呼ばれます。コミサリスは、日本の監査役とは異なり、取締役の権限を一時的に制限することができるなど強力な権限を有していることが特徴です。
 
Q7:取締役の報酬は自由に決めて良いのですか?
A7:原則として、株主総会の普通決議により決定されます。ただし、コミサリスに権限が委譲された場合にはコミサリスにより決定されます。
 
 

【インドネシアの労働法に関するQ&A】

 
Q1. インドネシアの最低賃金額はいくらですか?
A1: インドネシアの最低賃金額は全国一律ではありません。
毎年1月に改定され、地域ごとに最低賃金額が定められています。たとえば、2022年のジャカルタ首都特別州では、4,453,936ルピアです。
 
Q2. インドネシアで雇用契約書の締結は必須ですか?
A2: 会社が労働者を直接雇用する場合には、雇用契約はすべて書面にする必要があります。雇用契約に関わらず、インドネシアでは、インドネシアの法人、政府当局または国民との間で契約を締結する場合には、インドネシア語による記載が義務付けられておりますので注意が必要です。
 
Q3. 雇用契約書に記載する必要がある事項は何ですか?
A3: 以下が必須記載事項です。
①会社の名称、所在地及び業種、②労働者の氏名、性別、年齢及び住所、③職業又は職種、④勤務地、⑤賃金及び支払方法、⑥会社及び労働者の権利及び義務を記載した職務要件、⑦労働契約の効力発生日及び有効期間、⑧労働契約書が作成された場所及び日付、⑨契約当事者の署名
 
Q4.インドネシアにおいて試用期間の規制はありますか?
A4: 無期雇用の労働者に対してのみ、個別の雇用契約に明記していれば、最長3か月間の使用期間を設けることができます。
 
Q5.インドネシアの労働時間の規制は日本と同じですか?
A5: 週6日の場合には、1日7時間以下、週40時間以下です。週5日の場合には、1日8時間以下、週40時間以下です。時間外労働については、労働者から合意を得たうえで、1日3時間、週14時間まで可能です。
 
Q6. インドネシアの休憩時間の規制はありますか?
A6: 連続4時間の労働に対して30分以上の休憩を付与する必要があります。
 
Q7. インドネシアの時間外労働手当の割増率はいくらですか?
A7: 平日は、最初の1時間は時給(1か月分の固定給×1/173で計算)の1.5倍、その後の時間は時給の2倍を支払う必要があります。
休日は、週6日勤務(祝日)の場合は、5時間目までは時給の2倍、6時間目は3倍、7、8時間目は4倍です。週6日勤務(祝日以外)の場合は、7時間目までは時給の2倍、8時間目は3倍、9、10時間目は4倍です。週5日勤務の場合は、8時間目までは時給の2倍、9時間目は3倍、10時間目は4倍です。
 
Q8. インドネシアの有給休暇は何日ですか?
A8: 勤続1 年以上の労働者は、有給休暇を取得する権利が法律上保障されています。労働者が継続して1年勤務した場合には、最低12日間の有給休暇を付与しなければなりません。また、就業規則等に長期休暇の制度を定めている場合には、勤続期間が継続して6年間に達した場合には、勤続7年目と8年目に各1か月以上の長期休暇を付与することができます。
 
Q9. インドネシアでは、どのような場合に解雇が認められていますか?
A9:以下の場合には、解雇を行うことができます。
・会社が合併、分割、支配権移転等を行い、労働者または雇用者が雇用の継続を望まない場合
・会社が損失を被っていることを理由に整理解雇を行う場合
・有期雇用契約における期間の満了
・会社が2年連続で損害を被ったことにより閉鎖する場合
・会社が不可抗力により閉鎖する場合
・会社が支払停止状態となった場合
・会社が破産する場合
・使用者が不当行為等を行ったことを理由に労働者が雇用関係の終了を申し出た場合
・労働裁判所が使用者による不当行為等は存在しない旨の判決を出し、使用者が解雇を決定した場合
・自己都合退職
・労働者が5日以上無断欠勤し、使用者から2回呼び出しを受けた場合
・労働者が雇用契約、就業規則に違反し、既に3回連続で警告を受けた場合
・労働者が犯罪の嫌疑で6か月間拘束され就業できない場合
・長期疾病・業務上の災害により12か月を超えて就労できない場合
・定年退職
・労働者が死亡した場合
 
Q10. インドネシアには社会保障制度がありますか?
A10: 労働者は基本的に、BPJSBadan Penyelenggara Jaminan Sosial)と呼ばれる社会保障制度の対象となります。健康保険、高齢保障、労災保障および年金を取り扱っています。使用者は労働者を同制度に登録する義務を負っており、労災保障以外については、使用者および労働者双方が保険金を負担する必要があります。
 

【インドネシアのビザに関するQ&A】

 
Q1. インドネシアで働く場合、どのようなビザを取得する必要がありますか?
A1: 就労を目的としてインドネシアに来る場合、たとえ短期間でも就労ビザの取得が必要です。一般的に、就労ビザは、一時滞在ビザ(C312)と呼ばれています。インドネシアで働くためには、この一時滞在ビザに加えてIMTAという就労許可証とKITASと呼ばれる一時滞在許可証を取得する必要があります。
なお、工場への立ち入りについては、就労とみなされるおそれが高いため、一時滞在ビザ(C312)を取得する必要があります。
 
Q2. 一時滞在ビザ(C312)の取得要件はありますか?
A2: 原則として、一時滞在ビザを取得するためには以下の要件を満たす必要があります。
・大学卒
・就労予定の役職要件に応じた学歴を有していること
・就労予定の役職に従った、少なくとも5年間の就業経験を有すること
60歳未満であること
 
Q3. 一時滞在ビザの有効期限はありますか?
A3: 通常、12か月間滞在することができます(会社役員は最大24か月)。5回まで延長することができます。一時滞在ビザ発行後、90日以内に入国する必要があります。
 
Q4. インドネシアで外国人が就労するために必要な手続きはどのように行うのですか?
A4: まず、外国人を雇用する会社が、①外国人従業員雇用計画書(RPTKA)を、外国人就労手続きのオンラインシステム(TKA Online)を通じて労働移住省に提出します。そして、RPTKAの承認が下りたら通知書が送られてきますので、②外国人労働者雇用補償金(DKP-TKA)の支払いをします(外国人1人につき、就労期間1か月に当たり100ドル)。DKP-TKAの納付をした後、③入国管理総局が一連の手続きにかかる料金が提示され、その手数料を納付すると、ビザ同意書が発行されます。④ビザ同意書が発行されてから60日以内に従業員本人が一時滞在ビザの申請を行います。また、一時滞在許可(KITAS)の申請も併せて行います。
 
Q5. 一時滞在ビザの申請のための必要書類は何ですか?
A5: 一般的には以下の書類が必要になります。
(1) 申請書
(2) パスポート原本
(3) パスポートのコピー
(3) 証明写真
(4) 招聘状/招待状原本
(5) 英文推薦状原本
(6) 査証発給許可証
(7) 英文経歴書
(8) 往復航空券またはインドネシアから出国する航空券のコピー
 
Q6. 一時滞在ビザを取得する場合、家族の同伴も可能ですか?
A6: 一時滞在ビザ取得後、帯同する家族は、一時滞在ビザ(C317)を申請し発給を受けることにより、インドネシアでの滞在が可能になります。
 
 

【インドネシアの不動産法制に関するQ&A】

 
Q1. 外国会社がインドネシア国内の土地を取得できますか?
A1: 原則として、インドネシア国民個人のみが土地に対する所有権を持つことが認められているため、法人が土地の所有権を取得することはできません。もっとも、事業権、建設権および使用権は外国会社を含むインドネシア法人も取得することが認められています。
 
Q2. インドネシアの土地の登記はどのような効力を有していますか?
A2. インドネシアの登記制度においては、土地に関する権利は国土庁の管轄下の各地方の土地管理局に登記されなければならないとされています。インドネシア法上、当事者間の土地の権利の移転は、土地譲渡証書の締結により生じると考えられているため、登記によって権利の移転が確定するといった効力はありません。もっとも、第三者に対して土地の権利を主張するためには、土地管理局における登記簿への登録および土地権利証の名義変更手続を完了する必要があると考えられています。
 
Q3. インドネシアの土地の登記は第三者も閲覧できますか?
A3: インドネシアの土地登記簿は非公開とされているため、第三者は閲覧することができません。したがって、土地を取引する場合には、売主から土地権利証の開示を受ける必要があります。
 
Q4. インドネシアにおいて土地と建物は別個の権利対象となりますか?
A4. インドネシア法上、土地と建物は別個の不動産として扱われ、個別に権利設定の対象となります。もっとも、建物は区分所有権を除き、単独では登記の対象とはならず、土地の付着物として土地の登記に付記されます。
 
 

【インドネシアの外資規制に関するQ&A】

 
Q1. インドネシアでは外資はどのような業種を行うことが可能ですか?
A1. インドネシアの外資規制は、投資法および投資分野に関する大統領令により定められています。2020年に、雇用創出オムニバス法が制定されたことに伴い、投資分野に関する大統領令202110号が制定されました。これにより、投資禁止業種が従来の20業種から6業種に大幅に削減され、内資と外資の区別も廃止されました。
投資が禁止される分野は、以下のとおりです。
(1)麻薬等栽培製造
(2)賭博・カジノ業
(3)ワシントン条約記載の魚類の捕獲
(4)サンゴの採取や利用、建材・石灰・カルシウム、水族館等
(5)化学兵器産業
(6)工業化学原料とオゾン層破壊原料産業
 
また、外資規制がある事業分野が定められた、いわゆる条件付き分野の内容についても改定されました。従来350業種あった事業分野が46業種に大幅に削減されています。
その他、中小企業のために留保されている中小企業留保分野が112業種、中小企業との協業が必要な中小企業協業分野が51業種あります。中小企業留保分野については、外資企業は参入できないことになっており、中小企業協業分野は外資企業も参入できますが、現地の劉章企業と協業する必要があります。
 
Q2. インドネシアでフランチャイズ規制はありますか?
A2: インドネシアではフランチャイズ規制が存在します。内資・外資を問わず、フランチャイザーおよびフランチャイジーは、フランチャイズ登録証明書を取得する必要があります。登録にあたっては、インドネシア語の申請書を作成する必要があり、外国語の文書については正式な翻訳が必要です。また、事業書の提出時点から遡って2年間分の財務諸表または貸借対照表を提出する必要があります。
さらに、国外のフランチャイザーは、所在する国のインドネシア大使館から事業書に対して法的認証を受ける必要があります。
 
Q3. インドネシアにおいて外国人雇用規制はありますか?
A3: 国内直接投資(DDI)企業については、外国人はコミサリスの職に就くことができません。また、外国人は以下の職に就くことはできません。
・人事役員
・産業関連マネージャー
・人事マネージャー
・人事開発責任者
・人事採用責任者
・人事配置責任者
・従業員キャリア開発責任者
・人事管理担当者
・最高経営責任者
・人事・キャリア専門家
・人事専門家
・キャリアアドバイザー
・職業アドバイザー
・職業指導およびカウンセリング
・従業員仲裁者
・職業訓練管理者
・採用面接者
・職業アナリスト
・労働安全スペシャリスト
 
 

【インドネシアの解散、清算及び破産に関するQ&A】

 
Q1. インドネシアでは会社の解散事由はどのようなものがありますか?
A1: 会社法上、以下の6つの解散事由が定められています。
(1)株主総会決議がなされた場合
(2)定款に記載された会社の存続期間が満了した場合
(3)裁判所の決定がなされた場合
(4)破産費用の支払いができないことを理由として商務裁判所から破産手続の取消決定がなされた場合
(5)破産宣告を受けた会社の財産財団が破産法に規定される債務超過状態にある場合
(6)会社の営業許可が取り消され、法令に従い会社の清算が求められている場合
 
Q2. 株主総会により解散決議はどのように行われますか?
A2: 取締役会、コミサリス会または10%以上の株式を保有する株主が解散提案を行った上で、株主総会では、4分の3以上の株式を有する株主が出席し、出席株主の4分の3以上の賛成が必要です(特殊決議)。
 
Q3.清算の手続はどのように行われますか?
A3: 株主総会により解散決議がなされた後、清算人は、当該解散決議日から30日以内に、全債権者に対して解散した旨を新聞および官報にて公告し、法務人権省に対して解散決議を行います。
債権者に対する通知事項は、①会社が解散した旨、②清算人の氏名・住所、③債権届出の提出方法、④債権の届出期間、です。
法務人権省に対する通知は、①会社が解散した法的根拠、②債権者に対する新聞広告の添付が必要です。
 
 

【インドネシアの裁判及び仲裁制度に関するQ&A】

 
Q1. インドネシアの裁判制度はどのようになっていますか?
A1: インドネシアの司法権を担う機関は、最高裁判所、最高裁判所の下に位置づけられる裁判所と憲法裁判所で構成されています。最高裁判所の下に位置づけられる裁判所とは、地方裁判所、高等裁判所の他、行政裁判所、宗教裁判所、労働裁判所、軍事裁判所、税務裁判所、商業裁判所、汚職裁判所、人権裁判所、少年裁判所および漁業裁判所です。
 
Q2.インドネシアの民事訴訟制度はどのようになっていますか?
A2: 民事上の請求は、原告が訴訟費用を支払い、訴状を裁判所に提出することにより開始される。訴訟開始は、高等裁判所においては、召喚令状、呼出状、請願書などにより、下級裁判所においては、召喚状により行われます。
請求書に対し反論する意向を有する被告は、出廷予告書を裁判所に提出する必要があり、提出しない場合、欠席判決が下されます
その後、相互に答弁書を提出し、書類の証拠開示手続が行われ、証拠が交換されます。これらの手続を経て、事実審理が行われます。
 
Q3.インドネシアにおいて日本の判決は執行されますか?
A3:インドネシアでは、外国の判決をインドネシアで執行することができる制度は設けられていないため、執行されません。裁判所による解決を図る場合には、改めてインドネシアの裁判所において訴訟を提起する必要があります。
 
Q4. インドネシアにおいて労働事件に関する特別な取扱は存在しますか?
A4: 労使紛争解決手続としては、①二者間協議、②労働移住省における手続(斡旋、調停または仲裁)、③労働裁判所・裁判所があり、この流れで手続が行われます。
 
Q5. インドネシアにおける仲裁制度はどのようになっていますか?
A5: 仲裁法が存在しますが、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁に関するモデル法に依拠していないため、国際標準とは異なる制度となっています。
インドネシアには、BANI(インドネシア仲裁委員会・Badan Arbitrase Nasional Indonesia)があり、インドネシア国内で仲裁を行う場合には、BANIが利用されることが多いと考えられます。
その他、インドネシアは、外国仲裁判断の承認および執行に関する条約(ニューヨーク条約)を批准しているため、同条約および仲裁法の拒絶事由に該当しない限り、JCAA(日本商事仲裁協会)、SIAC(シンガポール国際仲裁センター)などの外国仲裁機関の行った仲裁判断をインドネシア国内で承認および執行することができます。
仲裁法上、外国仲裁機関の承認および執行は、ジャカルタ中央地方裁判所が取り扱うこととなっており、仲裁人またはその代理人は同裁判所に対し、仲裁判断を提出して登録を行った上で、執行命令を取得するための申立てを行う必要があります。
 
 
 

【インドネシアの特許法に関するQ&A】

 
Q1.どのような発明なら、特許を取得できますか?
A1.発明が、新規性・進歩性及び産業上利用可能であれば、その発明は特許を受ける事ができます(特許法3条1項)。
 
Q2.発明とは、どのように定義されていますか?
A2.インドネシアでの発明の定義は、
「特定の技術的な問題の解決のために創作された発明者の技術的思想であって、物または方法の改良および改善(特許法1条2項)」です。
 
Q3.特許を受けることができない発明はありますか?
A3.特許を受けることができない発明として、以下の(1)~(5)が挙げられます。
(1)その公表、使用または実施が、法規、宗教、公共の秩序または道徳に反する方法または道徳に反する方法または物
(2)人および・または動物に対する検査、看護、治療および・または手術の方法
(3)科学および数学の分野における理論および方法
(4)微生物を除く生物
(5)植物または動物の生産に必須の生物学的方法、ただし、非生物学的方法または微生物学的方法を除く
 
 

【インドネシアの商標法に関するQ&A】

 
Q1. 商標を登録すると、どんなメリットがありますか?
A1.商標が登録されれば、その商標を侵害している者に対して、民事訴訟、刑事訴訟または税関差止めを通して権利行使をすることができます。
 
Q2. 商標の出願の流れは,どのようになっていますか?
A2.「出願方式審査→出願公告開始→異議申立期間(出願公開開始から2か月)→出願公告終了→実体審査登録査定登録」という流れになっています。
 
Q3. 登録できない商標としてはどのようなものがありますか?
A3. 登録できない商標(登録不能事由)としては、
・国家のイデオロギー、法律・規則、道徳、宗教、良俗または公の秩序に反する標章
・指定商品・役務の説明に過ぎない標章、これらに類似または関連する標章
・指定商品・役務の出所、品質、タイプ、サイズ、意図された使用方法を誤認させる可能性のある要素を含んでいる標章、または指定商品・役務に類似する保護された植物の新品種の名称を構成する標章
・識別性を有する特徴がない標章
・一般名称、公共のサインとなっている標章
また、登録されている同一または類似の指定商品・役務がある場合は、登録拒絶事由に該当し、正当な権限を有する者の書面による同意があれば登録が認められます。
 
Q4. インドネシアへ商標出願する際,マドプロ制度を利用することはできますか?
A4. インドネシアはマドプロに加盟していますので、利用することができます。
 
 
 

【インドネシアの弁護士制度に関するQ&A】

 
Q1:インドネシアの弁護士資格はどうすれば取得できますか?
A1:インドネシア法の弁護士資格は、25歳以上のインドネシア国内に居住するインドネシア国民しか取得することができません。法学部(4年制)を卒業したのち、統一弁護士会(PERADI)の法律専門家コースを修了し、同会が実施する弁護士試験に合格した上で、弁護士の事務所で2年間のインターン活動をすることにより取得できます。
 
Q2:インドネシアに弁護士会はありますか?
A22003年に制定された弁護士法により統一弁護士会(PERADI)が唯一の弁護士会として2004年に発足しましたが、その後分裂し、現在ではKongres Adovokat Indonesia (KAI)等の複数の弁護士会が存在しています。
 
Q3:インドネシアに司法書士や行政書士等の隣接法律職はありますか?
A3:インドネシアには、弁護士の他に、法務コンサルタント、土地証書作成官(PPTA)および公証人(ノタリス)が存在します。法務コンサルタントは、法律に関連した助言を行い、訴訟に直接関連したサービス以外の業務を行うことができます。土地証書作成官は、土地に関連する権利の登記等の業務を行います。公証人は、土地証書以外の公正証書の作成を行います。
 
 

 【雇用創出オムニバス法に関するQ&A】

 
Q1:最近、雇用創出オムニバス法が制定されたと聞きましたが、どのような内容ですか?
A1:雇用創出オムニバス法は、2020112日に施行された法律で、雇用創出のための投資誘致を目的として、労働、投資など11分野について、関連する法律79本を一括して改正したものです。
11分野のうち、事業許認可、投資要件、労働、中小零細企業、事業便宜、土地収用、経済地区の7つの分野については、企業の事業活動に大きく関係する分野であるといえます。たとえば、最低賃金の算定方法改正や退職手当の引き下げ、外資規制の緩和など、企業がインドネシアに進出する上で、極めて重要な内容が多く含まれています。
もっとも、同法には、実質的な内容について、大統領規程や政府規制に委任する条文が多く、不透明な部分が多いことから、今後の細則整備の進捗とその内容を注視する必要があるといえます。
 
Q2:雇用創出オムニバス法による今後の運用について注意すべき点はありますか?
A220211125日、インドネシア憲法裁判所は、雇用創出オムニバス法の立法手続きに瑕疵があることから、今後2年以内に必要な改正が行われなければ違憲であるという「条件付き違憲判決」が下された上で、憲法裁判所は政府に対し同法に関連する新たな規則の発行を停止するよう命令しました。
なお、判決から2年後である20231125日までに立法手続きの瑕疵を修正する法改正ができなかった場合であっても、それまでに同法およびその規則に基づき行われたものは無効にならないとされていますが、今後の運用については不透明であり、引き続き注視する必要があります。
 
 
 
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